【映画】キャロル(Carol)

 

キャロル(字幕版)
 

 

■総評

 

 胸が締めつけられました。一言で言えば、良質な大人の映画。

 

 私は同性愛者なのですが、異性愛者の恋愛ドラマや映画には感情移入ができないんですよね。たくさんのドラマの末にカップルになったりすると、こう、親や友人になった気持ちで「良かったなぁ」とは思うし、脚本の秀逸さなんかをフツーに楽しむんですけど、真の意味でのめりこむ、というか、感情を共有することはできません。だから、セクシャルマイノリティが当たり前に出てくる海外ドラマを好んで見るのですが。

そういうわけで、この映画ではどっぷりと自分を投入して鑑賞することができました。

 

 こんなにも上質なレズビアンをメインとした映画が出るなんて。『ブローバック・マウンテン』が出たときに、「時代は、時代はここまできたのか!」と感動したものですが、やっぱり私がレズビアンである以上、女性同士の恋愛にやっぱり傾いてしまうのです。すみません。これほどまともにえがいてくれたのは本当に感慨深いです。

 

■ 登場人物たち

 

 さて、この映画のタイトルにもなっているキャロルは、自分から若い女をひっかけて、ぐいぐいいっちゃう強い女性、ではあるんですけども、それよりもえらくかわいらしい人だなぁ、という印象が強かったです。もちろん、この時代の難しさがところどころ見て取れ(心苦しいですが……)、その中でも自分を貫いた勇気ある、素晴らしい人です。拍手! でも、それと同時に、彼女はとても繊細な人であって、その繊細さに私は惹かれました。本当に、愛らしい。かわいいよー、キャロル。

 

 そんなキャロルに対して、若いテレーズは、一見受け身なのですが、実はテレーズの方がある意味精神的には強者であるように思えました。男性的・女性的で分けるのは好きではありませんが、便宜上その分け方で言うと、男性的な強さをもっているような。キャロルよりもたくましいのだと思います、テレーズは。揺るがない。若さ故、といったところもあるのかもしませんが。

 

 キャロルがテレーズにあそこまで惹かれた理由は正直わかりませんでしたが、その揺るがなさ、堅牢な柱のような精神性が美しく見えたのでしょうか。

 

 その他には、キャロルの友人であるアビーのアシストも光っていました。わかるよ、私もそんな感じの人がいるので、とてもよくわかる。一度愛してしまうと、ずっと特別だものね。キャロルとアビーの関係性もよかった。

 

 男性陣があまりにも……といった感じで描かれていたのはどうかとも思うのですが、経験上ああいう人たちがいないこともないですから、溜飲は下げましょう。

 

■目と手が全てを物語る映画

 この映画の全ては、目と手に込められています。全てをそれで語る映画です。なんとも官能的、エロティック。ベッドシーンよりも、ずっとずっと訴えかけてくる。どきどきしました。もう、もう素晴らしい。二人の関係性と感情がそこにこめられているのですね。

    正直、脚本自体には目新しいものはありません。むしろ、つまらないでしょう。でも、この演出の妙とカットの見せ方、演者の演技力がこの映画を素晴らしいものにしています。現実と同じ。死すら温度をもたない、ニュートラルなナマの現実を鮮やかにするのは、その演者、そして演出です。

 

 最後、テレーズがキャロルを選んだとわかったとき、エンドロールに入る直前のあのキャロルの潤んだ眼差し。忘れられないです。

 

良い映画を観ることができました……ため息しかでないなぁ。はぁ。